壱生の場合、
1、自転車の鍵
2、自重
3、女子としての何か
こんな感じになってます。自転車の鍵なくす常習犯過ぎて家族に「お前もう持ち運ぶタイプ禁止な」と言われ
とうとう鍵が数字入力式になりました。遺影っ←
さてさて、今回のSSは名夏で、合鍵の話です。
合鍵もらって名取さん家にきたものの・・といった話です。
名取さん一人暮らしでちょっとヘタレ。なんか捏造はいってますが、よろしければ続きからどうぞです。
一ヶ月ぶりに名取さんの家を訪ねたのだが、肝心の彼は不在だった。鍵を回し、呟く。
「それもその筈、か。」
名取さんは普段の帰り時間は遅いと言っていた。
部屋の中の物や家具は自由にして良い、とも。
合鍵を渡される時に告げられた言葉に、
『同棲する訳ではないのだから』
と言って笑うと
『しないのかい?』
と悲しさ全開の表情で返された。その後名取さんが落ち込んで、
二時間かけて必死に宥め二十歳になったら考えると約束を交わしてしまった。
「名取さん…」
深夜一時を過ぎるとさすがに少し眠くなり、自由にしていいと言われたベッドを
借りることにした。眠るまいと思っていたのに枕から名取さんの匂いがして安堵
してしまい、いとも容易く意識はまどろみへ落ちてしまう。
いけないと分かっている。だが、人間は得てして睡魔に勝てぬイキモノである。
…………、……。
……?
唇に柔らかな感触を感じ、目を開くと名取さんが信じられないほどの近くで微笑
んでいた。どき、と胸が高鳴り頬が染まる。
「やっぱり眠り姫はキスで起きるんだね。」
不本意な単語が聞こえたが、ベッドを占領し、
挙げ句の果てに寝起きのぼんやりした頭のため反論できなかった。
それより…
「っ…名取さん、ごめんなさい…起きて待ってようと思ってたのに。」
「構わないよ。夏目が来てくれたんだしね。それより寝るでもしてくれないと、
こんな遅い時間まで君を一人で待たせていたなんて、と自分を責めてしまうだろ
う?」
演技ではないとびきりの笑顔に魅せられてしてしまった。
「私は正直君が足りなくて。スタッフにまで心配されてしまったよ。仕方ないじゃないか、
恋人に一ヶ月も会えなかったんだよ?」
何処か拗ねたような口調で紡がれる恋人という単語に鼓動が高鳴った。この人の
悪いところは、至って無自覚で人の心臓を弄ぶところだ。
「おれも名取さんに、会いかった…です。でもそう直球で言われると、なんだか。」
「照れるのかい?」
意地悪な声音。でもこの一ヶ月名取さんの声が体が匂いがずっと、感じたかったのだ。と
満たされていく感覚がそれを教える。
「ちょっと、良いかい?君に見せたいものがあるんだ」
「何ですか…?」
リビングまで移動して、視線の先には前訪ねた時にはなかった揃いのマグカップ
にスリッパや四人がけのソファーなどが置かれていた。
「君と暮らすための第一歩。みたいな感じかな。」
この人は本当に…、
「約束まではまだ5年あるんですよ?」
「5年なんてあっという間だよ。それに君はまだ子供だから、短く感じるだろうね。
でも私は、君が大人になってそれから先も隣でずっと見守っていたいんだ。
私を君の傍に居させてくれるかい?」
「…名取さん。それは、どう受け取ったら良いんですか?」
大人になってから、ずっと。つまり、それは、ええと。思考が暴走を始める。
フェルマの定理受動態ミッドウェー海戦相対性理論長州藩ヘルマンヘッセ跳ね返り係数伊達政宗滑車の原理グリム兄弟地動説コペルニクス解の公式助動詞メンデル奥の細道遺伝の法則日英同盟…etc。
今までに習ったとりとめもないことが奔流して何も考えられない。
「直球は嫌なんだろ?だから結婚したい、と遠回しに言ったんだよ。はは…今言
ったので遠回しも台無しかな?」
肩を優しく掴まれて、おれは、ただ。
「お願いしますね、周一さん。」
とだけ告げた。
その後。
「夏目、アメリカでも行って戸籍だけでも変えてから帰国するって言うのも手だよ。
それに新婚旅行は何処がいいかい?家事の分担はどうしようか?ああそうだ。
ベッドは大きいものを買わなくてはね。もう、決めなくてはならないことが山になっているなぁ。」
「何年先の話ですか、それ。」
「笑わないでくれよ。私は真剣なんだから」
「ごめんなさい・・・。だからそんなにきつく抱き締めないで下さい。苦し…」
「ああああああ、すまない、つい夢中だったから…あ、でも夏目髪の毛ふわふわしてる。」
「だまりなさい。」
「痛っ!!スリッパは人を殴るためのものじゃな「正当防衛です。」
しばらく幸せな悩みは続きそうです。
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